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法人を理解する - 第3回 -

法人を理解する - 第3回 -

第1・2回に続いて、個別の法人情報について記載する。

 


第1・2回については、下記URLをご参照ください。
≪法人を理解する - 第1回 -≫
http://alox.jp/blog/merumaga_first/corp
≪法人を理解する - 第2回 -≫
http://alox.jp/blog/merumaga_first/corp-2
 
 

<非営利>
(3) 学校法人
〔定  義〕
私立学校法に基づき設立される法人である。

〔法  律〕 私立学校法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)理事長及び設置する学校の長も含め5人以上の理事や2人以上の監事を
置かなければならない
2)理事の2倍を超える数の評議員で組織する評議員会を設置しなければならない

〔透明度〕 非公開

〔解  説〕
理事長の考えによって左右される私立学校である。

私立ゆえに、特徴のある校風や教師、校舎を持つ学校が多数ある。

若干だが閉鎖的であり、外部から中をうかがい知ることが難しい。
学校法人会計の原則に従い、資金収支計算書や貸借対照表の作成義務はあるが、
開示されているケースはほとんどない。

一方、構造改革特別区域法によって設立される学校設置会社(株式会社)には、
上場企業もあり、会社概要や決算書等も開示されている。

 

(4) 宗教法人
〔定  義〕
宗教法人法により、法人格を取得した宗教団体である。

〔法  律〕 宗教法人法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)法人の定款に類する根本規則として「規則」を作成し、その規則について
所轄庁の認証を受けなければならない
2)3人以上の責任役員をおき、そのうち1人を代表役員とする(未成年は役員になれない)
3)毎年所有財産と財務管理等を所轄庁へ提出しなければならない

〔透明度〕 非公開(-)

〔解  説〕
税制優遇抜群の公益法人である。

布施収入に対する法人税や、礼拝施設の不動産取得税、登録免許税、
固定資産税などが非課税である。

税制上のメリットが多数あるため、エセ宗教法人の増加やネットにおける
法人格の売買等があり、現在では法人格取得のハードルは高い。

所轄庁が活動実態を把握することを目的として、収支計算書などを毎年
提出することを全宗教法人に対して義務づけているが、未提出の罰金が
1万円以下のため、書類を提出しない法人も多数あるという。

表は宗教法人の看板を背負っているが、裏では営利のファミリー企業が
複雑に連携していることも多々ある。

 

(5) 医療法人
〔定  義〕
医師が常勤する病院や介護老人保健施設の開設・所有を目的とする法人である。

〔法  律〕 医療法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)剰余金の配当はできない
2)社団、財団ともに理事会が最高意思決定機関である。

〔透明度〕 半透明(-)

〔解  説〕
医業の永続性の確保や資金の集積を目的とした法人である。

諸官庁にて、平成19年4月1日以降に始まる会計年度の定款及び
事業報告等提出書の閲覧が可能である。
具体的には、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、
監事監査報告書の閲覧ができる。

業種が営利になじまない医療ゆえに、非営利法人の分類になっているが、
実質的に営利追求型と言えなくはない法人も存在するだろう。

 

(6) 特定非営利活動法人
〔定  義〕
特定非営利活動促進法に基づいて設立される法人である。
NPO法人とも呼ばれる。

〔法  律〕 特定非営利活動促進法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)宗教的・政治的活動を主たる目的として行うことはできない
2)10人以上の社員、理事3人・監事1人以上の役員が必要である
3)所轄庁である都道府県知事もしくは内閣総理大臣の認証を得たうえで、
設立登記をする必要がある

〔透明度〕 半透明(-)

〔解  説〕
医療、まちづくり、学術、人権、経済活動の活性化、消費者保護等の
17種類の分野に限った非営利法人である。

諸官庁にて、事業報告書等、役員名簿等及び定款等が閲覧可能である。

非営利と言いながら、事実上営利目的であったり、右翼・左翼団体、
犯罪組織であるケースがある。

多くの非営利法人は、欧米と違って寄付等の資金源が少ないため、
行政からの事業委託に依存していることも多い。

 

(7) 協同組合
〔定  義〕
消費者、中小事業者などが、生活や事業の改善を目的とした協同活動を行うため、
共同で出資して設立する非営利の組合(法人格あり)である。

〔法  律〕 各種組合法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)4名以上の発起人が必要である
2)3名以上の理事、1名以上の監事が必要である
3)組合の設立認可申請を所管庁に行い、
設立の認可を受ける必要がある

〔透明度〕 半透明

〔解  説〕
互助の精神に基づいて設立される組合(法人格あり)である。

組合は、通常総会の終了の日から2週間以内に、所管庁に事業報告書、
財産目録、貸借対象表、損益計算書、剰余金の処分又は損失の処理の方法を
記載した書面、通常総会の議事録を提出しなければならない。

決算書は組合員、組合の債務者が閲覧又は謄写を求めたときは、
理事は正当な理由がなければ、これを拒んではならないことになっている。

具体的には、生活協同組合、農業協同組合(農協)、漁業協同組合(漁協)、
森林組合、事業協同組合、労働者協同組合、住宅協同組合、
信用協同組合などが協同組合にあたる。

 

(8) 信用金庫
〔定  義〕
会員出資による協同組織の金融機関である。

〔法  律〕 信用金庫法

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)中小企業や個人(主に会員)を対象としており、大企業には融資できない。
2)営業地域が限定されている。

〔透明度〕 透 明

〔解  説〕
地域限定の会員や中小企業を対象とした非営利の金融機関である。

ディスクロージャー誌によって、財産や収支の状況といった財務内容、
経営方針や組織、商品・サービスの内容などが開示されている。

株式会社の金融機関と同様に、金融庁によって法令遵守や
経営の健全性等を定期検査される。

信用金庫の中央銀行として、信金中央金庫(信金中金)が存在する。

 

<その他>
(1) 公法人
〔定  義〕
公の事務を行うことを目的とする法人や公法に規定された法人である。

〔法  律〕 各種法令

〔特  徴〕
法令によって定められた官庁会計(公会計)によって、財務諸表の作成が
義務付けられている。
しかし、情報開示については、公法人によって雲泥の差がある。

〔透明度〕 半透明

〔解  説〕
国や地方公共団体の影響が濃い法人である。

具体的には、国、地方公共団体、国立大学法人、公立大学法人、
独立行政法人、特殊法人、認可法人、公社などがそれにあたる。

官僚の天下り先として機能する法人も多い。
さらに、その公法人から天下り先として、ファミリー企業や下請け会社が
存在していることもあり、見事なまでの“天下りピラミッド”が成立する業界もある。

一概には言えないが、「事業仕分けの対象となりうる法人(国は除く)」と言える。

 

(2) 任意組合
〔定  義〕
各当事者が出資を行って共同の事業を営むことを約する合意によって成立する団体である。

〔法  律〕 民法

〔特  徴〕
組合の成立要件は下記のとおりである。
1)複数の当事者が存在する
2)当事者たる組合員による出資(労働や信用でも可能)がある
3)特定の共同事業を営むことを目的とする
4)当事者が組合の成立を合意すること

〔透明度〕 真っ暗

〔解  説〕
存在すら認知することが難しい団体である。

出資者は、登記や決算公告等の情報開示義務を負わない。
ただし、法人ではないため、団体としての権利義務はなく、
組合員それぞれが無限責任を負う。

組合契約によって、運営や組織員の権限、利益分配などについて
自由に決めることができる。

秘密結社というと宗教絡みを連想するが、組合はそれに近い形態である。

 

(3) 匿名組合
〔定  義〕
匿名組合員が営業者のために出資をなし、その営業より生じる
利益の分配を受けることを約束する2者間の双務契約形態である。

〔法  律〕 商法

〔特  徴〕
営業に関する取引相手に対して、組合員の名前が公表されないので、
「匿名」と呼ばれており、実務上はTKとも言う。

〔透明度〕 真っ暗(-)

〔解  説〕
組合とは名ばかりの2者間の個別契約である。

一見すると何らかの事業体や団体の風体だが、
「営業者が組合員から高金利を約束して借金している」だけである。
“利回りが年100%!”と声高に宣伝し、匿名組合方式のファンドへ
出資させるという手口が横行しており、古くは平成電電、最近では
フィリピンでのエビの養殖を謳ったワールドオーシャンファームの詐欺などで、
匿名組合の形態が利用されている。

 

(4) 有限責任事業組合(日本版LLP)
〔定  義〕
有限責任事業組合契約に関する法律に基づいた契約によって
成立した組合である。

〔法  律〕 有限責任事業組合契約に関する法律

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)構成員全員が有限責任である
2)損益や権限の分配が自由に決めることができる
3)法人課税はなく、構成員に課税が適用される
4)やむを得ない場合を除き、組合員は任意脱退ができない

〔透明度〕 非公開

〔解  説〕
有限責任の組合である。

任意組合は、組合員が無限責任を負うが、LLPでは有限責任のため、
出資額以上の責任を負う必要がない。
企業同士の共同事業を行う際に利用されている。

ちなみに、非常に近しい形態として、合同会社(日本版LLC)が存在する。
両社の大きな違いは法人課税の有無である。
つまり、合同会社は法人税が適用されるが、組合は個人に課税がなされる。

 

(5) 投資事業有限責任組合
〔定  義〕
ファンド法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)に基づいた
契約によって成立した組合である。

〔法  律〕  投資事業有限責任組合契約に関する法律、
金融商品取引法(規模の大きな組合が対象)

〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)無限責任組合員と有限責任組合員で構成されている
2)契約後、事務所の所在地において、必要事項を登記しなければならない
3)法人課税はなく、構成員に課税が適用される
4)やむを得ない場合を除き、組合員は任意脱退ができない

〔透明度〕 半透明

〔解  説〕
いわゆるファンドである。
2004年4月の法改正により、「未公開の中小企業」以外にも上場企業、
中堅・大企業にも投資できるようになった。

投資家保護の観点から、ディスクロージャー誌や有価証券届出書などによって、
目論見書や運用報告書などが開示されている。

規模としては、ピンからキリまであり、EDINETやホームページによって
情報が開示されている組合もあれば、他の組合と同様に実態が
分かりにくいものも存在する。

村上ファンドやライブドアでも同組合の形態が利用されていた。

 
 

【総括】
『法人を理解するシリーズ』の作成によって、再認識したことが1つある。
それは、自明すぎる程に自明なのは分かっているが、強調しておきたい。

「日本は資本主義」である。

“資本家”が株式会社を保有し、その株式会社との取引によって、
営利法人や非営利法人は潤う。
“資本家”は、株式会社や投資事業組合から配当を得る。

暴論を承知で言えば、今の日本を作っているのは、資本家である。
資本家が社会的責任投資(企業の環境配慮行動、倫理的・社会的行動を
スクリーニングの基準とする投資)を行うことによって、
日本の法人の質は飛躍的に向上する。

同様の考え方として、融資・販売・投資・調達先の法人を分析する際には、
1つの視点として“社会的責任分析”を取り入れて頂きたい。

あなたの取引先や投資先の質の向上は、あなたの会社やポートフォリオ
の質を向上させ、ひいては日本の質も向上させることになるだろう。

 
 

※ 参照資料
・国税庁 『会社標本調査結果』
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2009/kaisya.htm
・法務省 『一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A』
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html
・厚生労働省 医療法人・医業経営のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/midashi.html
・匿名組合.com
http://www.tokumeikumiai.com/
・投資事業有限責任組合の全て
http://lps-mlo.sakura.ne.jp/
・信用金庫
http://www.shinkin.co.jp/
・Wikipedia
『法人』『資本主義』『持分会社』『特定目的会社』『監査法人』
『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』
『公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律』
『学校法人』『宗教法人』『医療法人』
『特定非営利活動法人』『協同組合』
『組合』『LLP』『投資事業有限責任組合』

後記

本シリーズをはじめるキッカケは、投資事業組合の存在である。

はじめて存在を認知した時、
「投資事業組合?何なんだ、これは?」と思いました。

新興市場の盛り上がりとともに、頻繁に目にするようになったが、
全く中身が見えない組織で、得たいが知れない名前がついていることも多く、
摩訶不思議なものに見えた。

身近な取引先の株主等にも、投資事業組合の存在があったこともあり、
「この際だから法人と言われる存在について定義づけて、
ついでに投資事業組合についても調べてみよう」と思い、
“理解するシリーズ”のレポートをはじめた。

だが、シリーズ作成途中に気付いたのだが、
投資事業組合は”法人”ではなかった。

法人格を有していない組合であった。
それゆえ、今回は急遽、法人区分にあった「公法人」を「その他」というカテゴリーに改め、
強引ではあるが投資事業組合を入れさせてもらいました。

本シリーズが「企業の真贋評価」にお役に立つことができれば幸甚です。

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